「安さを追ってばかりで大丈夫?」スーパーの安さの“裏側”にある現実とは

「少しでも安くすませたい!」「買うなら1円でも安い店がいい!」
物の値段はどんどん上がるのに、給料が思うように上がらない。
だからこそ、「少しでも食費を抑えたい」と誰もが思っているのではないでしょうか。
でもその一方で
「なんで海外産の肉が半額で買えるのか?」
「このシャケが100円台なのはどうして?」
と、スーパーで何気なく手に取る食品の価格に「この値段でこれだけ入ってて大丈夫?」と疑問に感じたことはありませんか?
今回の記事ではそんな食品の“見えない中身”に迫ります。
そもそも遺伝子って何だろう?

–どうして子どもは親に似るんだろう?
「お父さんに似て背が高いね」
「ママの天然な性格にそっくり」
本意でなくてもそんなふうに言われたことがある人もいるかもしれません。
これは「遺伝子」が、“体の設計図”ような役割をしているからです。
親の特徴が子供に伝わる。それが“遺伝”です。
ぼくは、体の色が母さんにそっくりなんだ
遺伝子(DNA)は、生き物が生きるために必要な情報を持っていて、その情報は命がつながるたびに次の世代へ受け継がれていきます。
でもこの遺伝子のお話、人間だけに該当するわけではありません。
植物も、魚も、虫も、この世の生き物すべてに遺伝子があるんです。
遺伝子組み換えとは、どういうこと?

本来、遺伝子は“自然に受け継がれる”ものです。
しかし、今では「人の手で特定の性質を持つ遺伝子を入れ替える」という技術が発達しました。
これが「遺伝子組み換え」と呼ばれているのです。
遺伝子を組み換えるって数十年前はなかなかパンチのある言葉だったはず。
お豆腐や納豆に「遺伝子組み換えでない」って書かれているのをみたことあるよ。
「遺伝子組み換え」どうして始まったの?
病気に強い生き物から遺伝子を取り出して、もう一方に入れると、この植物も病気に強くなるということを可能にしています。
害虫に強いとうもろこし、長持ちするトマト、最近では虫が食べると死んでしまう、「虫殺じゃがいも」まで開発されているのです。
この技術はすでに世界中で使われていて、遺伝子組み換えにより、野菜を効率よく育てたり、農薬の量を減らしたりできるのです。
大豆・トウモロコシ・綿・なたねなどが多く商業利用されています。
なぜこんなことをするのか?

いちばんは「効率化」と「コストダウン」。
つまり、「早く、たくさん、安く」作るために行われてきたのです。
☑︎野菜が育てやすくなって、農家の手間が減る
☑︎収穫量が安定する
☑︎農薬の効果が高くなる
こうした目的から、遺伝子組み換え作物は開発され、世界中に広がっていきました。
もちろん、いい面もあります。
たとえば、作物が育ちにくい地域や、災害で農業が困難になったとき──
遺伝子組み換えの技術が、食料を守る助けになることもあるのです。
物価が上がっている今、ちょっとの手間でたくさん作ってお店に並ぶ野菜が安くなるのは良いことだよね!
人々からより好まれるきれいなお花やおいしい野菜もこうやって作られているの。でもね…
視点を変えると…じつは種と農薬がセットになっている現実があった
ここで少しだけ、別の角度から見てみましょう。
じつはこれらの“遺伝子組み換えの種”は、除草剤とセットで使うしかないようにつくられています。
遺伝子組み換えの種には、それに合う除草剤を使わないと作物が育たず、除草の効果も出ないのです。
この“組み合わせ前提の設計”があるからこそ、
種と農薬の両方を持っている企業が強い立場に立つことになります。
とある一つの会社が除草剤も種も一緒に売ってに儲けているという背景がありました。
その代表が、「ラウンドアップ」という除草剤
そして、このラウンドアップと種のセットを世界中に広めたのが、かつてのモンサント社(現在はバイエルに買収)です。
「この種には、この農薬がよく効く」
「農薬をかけても作物は枯れないように、遺伝子をいじってある」
つまり、種と農薬の両方を“同じ企業”が販売して一手に儲ける仕組みが作られていたってこと
このような現状が表に出ることは少ないですが、世界の農業はこの“仕組み”に深く影響を受けてきたのです。
2014年、フランスでドキュメンタリー番組が放送された翌年、日本でもBSで実態が伝えられているのよ
ラウンドアップ、世界ではどうなってる?
がん訴訟が相次ぐアメリカの現状
現実的な問題としてラウンドアップが「がんの原因になった」として訴えられる裁判が、アメリカで多数起きています。
バイエル(モンサントを買収した企業)は、米国での訴訟件数が17万越え。
そのうち10万件超は和解になり、その和解金は約110億ドル(約1.6兆円)に達しています。
それでも和解していない訴訟も6万7000件残っていて、増え続けています。
何も知らずに目の前の効果だけをみて使うってほんとは怖いんだね
禁止や制限が進むヨーロッパ・アジア
ラウンドアップ(グリホサート)は、今も世界中で使われている除草剤です。
でも、その安全性をめぐって「使わないようにしよう」という国がどんどん増えてきています。
🇫🇷フランスでは…
家庭用としての使用が完全に禁止。
家の庭やベランダでラウンドアップを使うこと自体が法律でNG。
公園や学校、道路でも使えなくなっています。
ベルギー、オランダでも公共や家庭での利用は厳しく制限されています
🇻🇳ベトナムはすでに…
2019年からラウンドアップの輸入も使用も全面禁止。
戦争の記憶や、農薬による健康被害の歴史もあって、とても慎重です。
各国の判断で規制が強化されるケースが増えています。
健康や環境への影響を懸念し、公共や家庭での使用を禁じる国、輸入そのものを止める国もあり、ラウンドアップをめぐる対応は地域ごとに大きく異なっているようです。
あれ?このあいだホームセンターで見たような気が…?
現在日本はどうなっているのか、見てみましょう
🇯🇵日本はむしろ「ゆるくなった」
日本だけは、ラウンドアップは今も自由に使えます。
ホームセンターのカ⚪︎ンズやネット通販でもふつうに買えるし、農業でも使われています。
しかも日本では2017年に小麦やそばなどに残っていても大丈夫とされる量の基準がゆるくなりました。
以前よりも「たくさん残っていてもOK」なルールに変わったのです。
つまり──
世界が「慎重にしよう」と進んでいる中で、日本はむしろゆるくなっているという現状が…

どの国も、自分たちの考え方により理由あってルールを決めています。
でも、国が認めているなら大丈夫と思っちゃうよ
大事なのは、「日本ではどうなっているのか?」を深く知ったうえで、自分の選び方を考えることかもしれません。
これらは「効率化」と「大量生産」を目的に広がりましたが、
“誰のための効率化か?”という問いが残ります。
日本では情報があまりないから、訴訟の起きている成分と同じものなのかは不明な部分もあるよ。
なぜ日本ではゆるくなったのか
じつは、日本では「種」に関する法律が変わったことで、農業の仕組みが大きく変わり始めています。
2018年、種子法(しゅしほう)という法律が廃止されました。
この法律ができる前までは、国が大切な作物(お米・麦・大豆など)の“種”を守り、安定して農家に配っていました。
でも、このルールがなくなり、民間企業──つまり、大手の種メーカーが自由に販売できる時代になったのです。
そして現在、世界大手の種子企業上位10社が市場の7割を占めている事実があります。
→特にBayer(旧モンサント)(現在はドイツ)、Corteva(アメリカ)、Syngenta(中国)、BASF(ドイツ)この4社だけで、世界の商業用種子市場の50%以上を押さえているとされています。
世界の50%ってすごい数字だよね?
そう。そして私たちが食べるている野菜や果物の“中身”は、メーカーが販売する小さな種の中にあるってこと。
おいしい野菜や果物を実らせてくれる“種”がどういった物なのかは、この4社の手の中にあるということですね。農薬とのセット販売も加速し、遺伝子組み換えを「買うしかない」農家が増えてきたのが現状としてあります。
シャケや鶏肉も遺伝子組み換えが多い
超巨大化したシャケ
アメリカで開発された「遺伝子組み換えシャケ」は、普通のシャケに比べて2倍以上のスピードで成長するのが特徴です。
でもその裏で、
「性格が凶暴」
「他の魚と交配すると生態系に影響する」
といった懸念も多く出ています。
EUでは今も輸入禁止。
一方、日本では「組み換えなのか」の表示義務もないため、
知らないうちに口にしている可能性もゼロではありません。
確かに!魚を買うときに「遺伝子組み換えでない」なんて表示みたことないよね
2倍のスピードで成長して巨大かつ凶暴なんて、ちょっと怖すぎる…
生後40日で出荷されるにわとりの実態
鶏肉も同じです。
いまスーパーでよく見る“ブロイラーという鶏肉”は、わずか40日ほどで出荷できるようにしている鶏。
成長が異常に早く、骨格が追いつかないため、自分で立ち上がれないまま出荷される鶏もいるといいます。
そういう鶏って、病気にもなりやすいんじゃないの?
だからこそ、抗生物質やワクチンも欠かせないって話よね
どうして「遺伝子組み換え」について表示されてないの?

「遺伝子組み換え不使用」って、昔はもっとよく見かけた気がしませんか?
じつは2023年、国の法律が変わり「遺伝子組み換えでない」表示義務がなくなったんです。
しかも「書いてはいけない」ルールも増えた
さらにややこしいのが、2023年の制度変更。
「遺伝子組み換えでない」と書くためのハードルが、ぐっと上がったのです。
どういうことかというと…
原料が「遺伝子組み換え0%」と断言できないと「遺伝子組み換えでない」と表記できなくなりました。
その結果これまで「遺伝子組み換えでない」と書いてあった商品が、スーパーの棚から、すーっと消えていったのです。
今まで「遺伝子組み換えでない」の表示があった商品は組み換えが0%ではなかったってことか…
最近スーパーで『遺伝子組換え混入防止管理済み』という表記をみかけない?これは遺伝子組み換えをしている原材料が5パーセント以下、わずかに入っているという場合に表示されているの
「遺伝子組み換え」は体に悪いのか?

遺伝子組み換えに関する一番の疑問は、やっぱりここかもしれません。
このまま何も知らない間に遺伝子組み換え製品に囲まれて、体に取り入れていると思ったら…ちょっと将来の自分が心配になってきた
実際に体に影響はあるのかしら?
WHOや厚労省は「認可されたものは安全」としている
世界保健機関(WHO)や、日本の厚生労働省は、「安全性が確認されたものだけが市場に出ている」としています。
つまり私たちがスーパーで手に取る食品は、一応“安全”とされているものです。
たとえば、遺伝子組み換え食品は、家畜や実験動物への試験を経て毒性がないかどうか、栄養バランスに問題がないかなどをチェックしたうえで販売が許可されます。
だから「すぐに体に異常が出る」ようなものではない。
それが、今のところの公式な見解です。
一応安全…とか、すぐには異常は出ない…とか、なんだかすごくぼんやりしてるね
でも、動物実験では変化が見られたケースも “完全に安全”とは言い切れない
いくつかの動物実験では、
・肝臓や腎臓の細胞に変化が見られた
・長期摂取でホルモンバランスの乱れが出た
・腫瘍の発生率が高まったという報告も(※のちに否定されたものも含む)
など、懸念材料が指摘されたケースもあります。
研究結果の中には、「リスクあり」と「リスクなし」が混在しており、専門家のあいだでも意見は分かれています。
じゃあぼくたちは一体どうしたらいいんだろう?
未来は、まだ誰にもわからない

遺伝子組み換えの技術が本格的に使われ始めたのは、1990年代。
つまり、私たちは「始まったばかりの歴史の中」に生きているということになります。
今のところは「安全」とされています。
でも、それは“現時点で大きな害が確認されていない”というだけで、
「未来も安全」だと約束されているわけではありません。
虫が食べない作物が増えれば、自然界のバランスはどうなるのか?
組み換えられた植物と、野生の種が交わったとき、何が起きるのか?
そしてその土壌や動物に何が起きるのか?
人の体は、10年、20年後も本当に平気なのか?
それは、まだ誰にもわからないことです。
巨大化したシャケを毎日食べていたら…どうなっちゃうんだろう?
だから、見えている部分だけじゃなく裏側を見るっていうのがとっても大事なの
それでも考えることを止めてはいけない
「どういう思いからこの野菜が作られているのか?」
「自分は食べ続けたいと思えるか?」
スーパーで食料品を選ぶときに、自分自身に問いかけてみるだけでも、
見え方が少しずつ変わっていきます。
安さの裏には、必ず理由があります。
それを知ったうえで、「自分はどう思うのか?」を考える。
その小さな問いをもち続けることが未来の体や環境、繋いでいく命に、ゆっくりと影響していくかもしれません。