環境・食・生活を疑う【mirror-japan】

表があれば必ず裏がある。メディアでは報じられない事実や、常識の裏に潜む真実を深掘りして発信する探求型メディア。

 

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水道民営化で日本の水は誰のものに?あたりまえが「当たり前でなくなる」危機

浄水場

「日本の水道水が危ない


――そんな言葉を耳にしても、日常で実感する人はそう多くないかもしれません。

えぇ!?水道水が危ない…?嘘だぁ。蛇口ひねれば出るし、全くピンと来ないよ。

ですが、蛇口をひねれば当たり前に流れ出る水は、もはや“当たり前”ではなくなりつつあります。

国連の報告では、世界人口の約4割が毎年少なくとも1か月は深刻な水不足に直面しています。

干ばつや気候変動による渇水、地下水の枯渇、都市化による需要増……水資源は「限りのないもの」では決してありません。

確かに。無意識に使ってるけど、実は貴重な資源なのよね。

4割って…!?水不足ってそんなに多いの…!規模が大きくてイメージしにくいけど、現実は深刻なんだ。ちょっと怖くなってきた。


その危機感につけ込み、水の利権を狙ったビジネスの争奪戦は1900年後半頃にはすでに始まっていました。
その頃から各国では水道事業を民間に開放し、外資が参入する流れが加速したのです。そして、その波は日本にも押し寄せています。「“水の公共性”をどう守るのか」という根本的な問いを、いま私たちは目の前に突きつけられています。

日本も例外じゃない…水の公共性をどう守るか、本当に考えないといけない時期なのね。

うーん、なんだか難しいテーマだな。でも水がないと生きていけないし…生活に直結してる問題なことはぼくにもわかるよ。

「今世紀の戦争が石油をめぐって戦われたものであったとするなら、新世紀の戦争は水をめぐって戦われることになるだろう」

            –1995年 世界銀行の総裁イスマイル・セラゲルディンより

水道民営化とは何か

浄水場

水道は今までは国が管理するのが当たり前のことでした。ですが、国ではなく民間事業者が各地域ごとの水道を管理し、そこに住む人の飲用水を販売することになるのが水道の民営化です。

え、水道を民間企業が管理して売っちゃうの…?ちょっとびっくり。


「水道の民営化」と聞くと、多くの人は“水道そのものを民間企業や外資系の会社へ売り渡す” そこの会社がきちんと管理してくれる、といったイメージを抱くと思います。
ですが、実際にはそんなに単純なものではありません。

聞いた感じはシンプルだけど、裏側には複雑な仕組みがありそうね。

語られにくい“裏面”
二〇一八年に成立した改正水道法の問題点は何か

日本で議論が本格化したのは、2018年の水道法改正です。

この改正により、自治体が持つ水道事業の「運営権」を民間事業者に委ねられるようになりました。

運営権だけを渡す…って、所有権は誰にあるの?自治体に残るのかな?


施設の所有権や料金決定権は自治体に残したまま、運営や維持管理を企業に任せる――これが「コンセッション方式」と呼ばれる、この改正法の仕組みです。

なるほど。つまり民間が運営するけど、料金や施設は自治体が管理してるってことね。


日本政府は改正法を追い風に、「PPP/PFI推進アクションプラン(令和五年改定版)」を策定し、水道・工業用水道・下水道あわせて225件の事業をコンセッション方式に段階的に移行する方針を示しています。

んー?なんだかわからなくなってきたぞ?

つまりね、政府は「水道や下水道をもっとうまく回したい!」って考えていて『PPP/PFI推進アクションプラン』っていう計画を作ったの。
この計画では、日本中の水道とか下水道の225の場所を、少しずつ民間の会社に運営してもらう仕組みに変えていくってこと。

ほーぉ!

さらに、これまで厚生労働省が担ってきた水道行政が国土交通省へ移管され、上下水道が一元化されたことも、この動きを強く後押ししています。

上下水道の管理が一つになると、民営化も進めやすくなるわよね。

水



この背景には、日本の水道が抱える構造的な課題があります。全国に張り巡らされた水道管は老朽化が進み、更新には莫大な費用が必要です。

実際に、道路が陥没しトラックの運転手の方が被害者となり亡くなったニュースも心に残るところだと思います。

人口減少により利用者が減り、料金収入が減る中で自治体の財政負担は増す一方となっています。

水道管の更新コストは膨大だけど事故リスクも無視できない…自治体だけでは限界があるのよね。

そこで政府や推進派は、民営化のメリットを強調し、

「ノウハウを取り入れることで効率化が期待できる」

「財政負担を軽くできる」

「インフラ強化を進められる」

ふむふむ、効率化や財政負担の軽減は魅力的だけど…何か裏がありそうだね。

こうした点が、民営化を後押しする根拠として示されてきました。
ですが、その裏には看過できない懸念も潜んでいます。

ここからが本当に考えないといけないポイントよ。

コスト削減の行き過ぎが水の安全性を脅かす


海外の民営化事例では、運営効率を追求するあまり水道料金の値上がりや水質低下につながったケースが報告されています。

え、効率化したら水質が下がっちゃうこともあるの!?ちょっと想像つかないかも。

実際にフランスやドイツでは、料金高騰や水質問題が住民の反発を呼び、世界では235以上の自治体が「再公営化」に踏み切りました。
実際、「公共化」されていたものを民営化してみると不都合なことが次々と持ち上がってきたのです。

つまり、民営化してみたら便利さだけじゃなくて、問題もいっぱい出てきたのね。

外資依存のリスク

フランスの水メジャー・ヴェオリアは、首都パリで水道事業を担った14年間に料金を倍増させ、結局は再び公営化された経緯があります。そのヴェオリアは、すでに、日本の宮城県で水道事業に参入し、埼玉・広島・浜松市といった地域でも下水道や上水道施設の維持管理を請け負っているという事実があります。

海外の会社が日本の水道の管理?知らなかったー。

政治と外資の近さがもたらす不信感

政治家の親族と外資系企業の関係をめぐる話題もSNSなどでたびたび取り沙汰されています。

たとえば、自民党の麻生太郎氏の娘婿フレデリック・デホン氏や、娘の彩子氏について「外資系の水関連企業と関わりがあるのでは」といった言説が拡散されたことがあります。

しかし、これらは公的資料や信頼性の高い一次情報で裏付けられているわけではなく、真偽不明の噂にとどまります。

噂に過ぎない。とは言われても…ねぇ。

確かな証拠が示されていないにもかかわらず、こうした情報が飛び交うこと自体が、市民の不安や不信感を強めているのです。

なぜなら2013年、まだ国会でなんの議論がなされていなかった時期に、麻生太郎氏がアメリカのシンクタンク(米戦略国際問題研究所)の講演で「日本のすべての水道事業を民営化する」と発言したからです。

え、そんなこと言ってたの!?そりゃ市民は警戒するよ。

この発言は、水道民営化に対し、日本政府の方針を示唆するものと受け止められ、市民の警戒感を強める大きな一因となりました。

国会議事堂

2018年、国会審議でヴェオリア日本法人の社員が内閣府へ出向していた事実や、政府関係者と海外水メジャーのスエズ・エンバイロメント社(※現在はヴェアオリアに統合)の幹部との接触が報じられ、「利益供与ではないか」と指摘もされています。

宮城県のコンセッション方式においてヴェオリア社が主要株主となっている現状を考えると、こうした指摘は軽視できません。透明性や説明責任が十分に果たされなければ、「官民癒着」と受け止められる懸念が強まるのではないでしょうか。

つまり、ちゃんと説明したり情報を公開しないと、「政府と民間企業がこっそり仲良くやってるんじゃ…?」って思われちゃうってことよね。

表向きには効率化や財政負担の軽減が強調される一方で、料金上昇、安全性の低下、外資依存、そして政治との近さがもたらす不信感――改正水道法の裏側には、私たちの生活を揺るがしかねない課題が潜んでいるのです。

うーん…表向きは良さそうに聞こえるけど、裏側はかなり複雑だね。

そう。だからこそ、一人ひとりが関心を持って動向を見ていかないとって話。



※ヴェオリアは2021年にスエズを買収し、水ビジネスの世界シェア5%を獲得しています。

ニセコ問題:リゾート地での水資源を巡る外資との摩擦

倶知安町周辺

北海道ニセコ町や倶知安町周辺では、近年、外国人投資家による土地取得が相次いでいます。

特に、町民約4,000人へ給水する大切な水道水源を抱える森林地(約16万3,000㎡)が買収されたことが問題となり、現在も札幌高等裁判所で控訴審が進行中です。

えっ…町の水源が買われちゃったの!?そんなの、地元の人は不安だよ。




そこで、外国人であっても日本の森林や水資源を購入できるという新たな問題も浮き彫りになりました。

今年6月には、中国人が代表を務める企業が、ニセコ町曽我地区において届け出をせずに森林を伐採していたことが明らかに。さらには、隣接する倶知安町の巽地区では、中国系企業もその水源を利用したウォータープラントの建設計画を立てていると報じられました。

つまり、海外資本が日本の水源や土地をどんどん押さえちゃってるってこと?

観光で人気が出るのはうれしいけど…水まで取られちゃうのはちょっと怖い気がしない?


こうした動きはニセコだけにとどまらず、長野県白馬村など日本各地で広がっています。

観光開発と地域資源の保全のはざまで、いかに持続可能な形で水を守っていくのか――私たちは傍観者のままでいいんでしょうか。

世界的な水不足と“水のビジネス化”

1900年代後半から世界貿易機関(WTO)などを利用した国際的な水の支配が始まると、各国の専門家は訴えていました。今やその言葉は現実味を帯び、世界規模で“水の争奪戦”が始まっています。

国連の報告によれば、世界人口の約4割が、1年のうち少なくとも1か月は深刻な水不足に直面しています。これはアフリカや中東に限らず、アジアや欧州にまで広がる現実です。渇水や地下水の枯渇が、日常的な課題になりつつあります。

えっ、そんなに!? 水不足って遠い国の話だと思ってた…。

そう。しかも原因はひとつじゃないの。人口増加・気候変動・都市化・農業用水の取りすぎといった問題全部が重なってるのよね。

水不足を加速させる要因は複合的です。

人口増加:世界人口は80億人を突破し、生活用水や農業用水の需要が急増

気候変動:干ばつや異常高温によって河川や湖が枯れ、降水パターンが乱れている

都市化・工業化:都市の拡大に伴う水需要の増加に加え、工業排水による水質汚染が重なる

農業の大量取水:世界の水使用量の約7割は農業が占め、地下水の過剰な汲み上げが各地で問題化している

こうした状況から、水が“資源”から巨大企業の“商品”へと変わりつつあるのです。

「水のビジネス化」―それは、誰かが“水で儲ける時代”が来たということなの。




—「利益を目的とした水の支配をもくろむ水カルテルが結成されるだろう」

     もう一つのノーベル賞を受賞 モード・バーロウ氏 2002年著書水戦争の世紀より


 「水のビジネス化」ミネラルウォーターブランド「ボルヴィック」はどうなったのか

枯れた土地



その象徴のひとつが、日本でも人気のあったミネラルウォーターブランド「ボルヴィック」。

水源はフランス・オーヴェルニュ地方の火山地帯ですが、過剰な採水によって水源の水量が減少し、かつて存在した水車が消え、川が干上がったと報じられています。枯れた土地にはこうした周辺地域は農業が立ち行かなくなり、生き物も消えていきます。

え、あのボルヴィック!?そんなことになってたなんて知らなかった…。

そう。ボトルの水が売れる裏で、地元の自然が失われていったの。



「水」が地域社会の生活基盤を支えるものであると同時に、企業活動によって“採取・販売の対象”になりうる現実。その表裏を示す事実といえるでしょう。

“水”の意味を問い直す

時はさかのぼり
日本は古来より“水の国”として文化を育んできました。
古事記や日本書紀には、川の氾濫や水害を鎮める存在として「瀬織津姫(せおりつひめ)」などの、水を司る神が登場しています。

水は人々の暮らし、生命を支える恵みとして古来より神聖な存在とされてきました。

あ、聞いたことある!日本って昔から水に感謝して暮らしてきたんだよね。



ところが現代では、蛇口をひねれば当然のように水が出る便利さが、かえってその価値への感謝を薄れさせています。

私たちは今一度、「水」とは何なのか、その意味と向き合い行動する時を迎えています。

いのちとなる水をどう守るか

地球を握り潰し、水を搾り出す

水道の民営化をめぐる議論は、単なる制度設計や経営効率の問題にとどまりません。
「水をどう守り、未来へ引き渡すか」という、人間の生存にかかわる根源的なテーマなのです。

水は生きるために欠かせないもの。だからこそ、お金のことだけで決めちゃいけないってことだね。

地域によって財政負担に差があるのは事実ですが、だからといって水の安全や安定供給を市場原理に委ねてよいのでしょうか。
いのちの水は、電気やガス以上に生活の基盤であり、すべての人に平等に保障されるべきものです。

国や自治体、私たちが責任を放棄するのではなく、どうすれば持続可能なかたちで守り継いでいけるのか。
いま国民一人ひとりが、その問いに向き合うことが求められています。

未来の子どもたちに、きれいな水を残さないとね。